2010/10/10

朝の光

2010年7月10日、ポルトガル南西部に位置するラゴス。

7月28日にマドリードから日本に飛ぶ飛行機のチケットは、すでにインターネットで予約済みだった。ポルトガルの主要都市からマドリードまでは、バスで8~9時間ともうすぐそこという距離だ。日程にもアクセスにも余裕ある状況にあって、いつ、どこへ移動しても、しなくても、大した問題はなかった。

ラゴスはバカンスシーズンには外国から多くの観光客が集まるリゾート地。どこの宿も宿泊代は高かったが、運よく「貸し部屋」をしている民家を見つけ、そこに安く泊まることができた。その民家には、ゲスト用のシャワールームにバスタブがあった。これが素晴らしかった。これまで泊まり歩いた安宿にはバスタブなどなく、たとえあったとしても、お湯を溜めて入れるというような代物ではなかった。この旅でお湯に浸かったことは、インドのラージギルという町で入った温泉の一度きりだった。だから、肩までお湯に浸かれるということが、どんな美味しい料理を食べるよりも嬉しかった。また、この民家ではキッチンも利用できた。しかも、家主と共用のものではなく、ゲスト専用のキッチンだ。キッチンには、冷蔵庫だけではなく、電子レンジも完備されている。調理道具も全てが新品同様にきれいだ。ゲストは私一人しかいないので、キッチンを独占できた。

ゆっくり風呂に浸かり、温泉気分を味わった後、キッチンでお気に入りのカルボナーララーメンを作り、屋上のテラスに運ぶ。テラスに上がりラーメンと一緒にこれまたお気に入りのサグレスビールを胃に流し込む。ヨーロッパでは日暮れの時間が21時頃と遅いため、夕食をとりながらテラスから海と夕日を拝むことができる。そんな風景と食事と軽い酔いに満足しながら、街歩きと海水浴で疲れた体を癒す。

「極楽浄土」とはこのことだろうか。

そんな日々を3日程送り、ラゴスを離れるか否か迷っていた。ラゴスにはもう少しいたい気がした。このような好条件の所に泊まれることはなかなかないし、もう少しあの透きとおるような海で泳ぎたかった。しかし、翌7月11日はサッカーワールドカップ南アフリカ大会の決勝がある。そしてその対戦カードは、オランダとスペインときた。ワールドカップ決勝をその開催地で観戦することは、なかなかできることではない。しかしまた、ワールドカップ決勝をワールドカップを優勝するであろう国で観ることもそう簡単にはできない。

スペインが優勝するかどうかなどわからないし、ラゴスに後ろ髪を引かれる思いもする。だがやはり、スペインに賭けたい。なにせ、あの「情熱の国」なのだ。私は、ラゴスという土地に少し未練を残しながらも、翌日早朝、息を呑むような輝く朝日に見送られ、スペインに向かった。



民家の貸し部屋(一泊18ユーロ)
 


テラスでの夕食
 


テラスからの朝日
 
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