2010/10/21

腹が減っては戦は観れぬ

ワールドカップ当日にスペインに着いた。さて次は、どこで、どのように決勝戦をテレビ観戦するかということが問題だ。スペインにはBAR(バール)というカフェ兼バーが日本のコンビニのように街のかしこに点在しており、そのBARならどこでも人気スポーツを流す大型テレビが設置されている。なので、そのBARででも決勝戦を観戦しようと思っていた。しかし、チェックインしたホステルの掲示板にはこうも書かれていた。

「当ホステルにテレビはありませんが、同系列のホステルのテレビルームでワールドカップ決勝の観戦会を行うので、是非足をお運びください。ただし、もちろんスペインを応援しますよね?」

うむ、なかなかいいじゃないか。酒を買ってホステルで飲めば、BARより費用が抑えられるし。

早めにシャワーを浴び、早めの夕食としてポルトガルから持ち込んだカルボナーララーメンを調理して食べた。それにしても、ヨーロッパに入り幾つかの国で見つけては食してきたが、Knorrのカルボナーララーメン、かなりやるぞ。どうして日本でも発売しないのだろう。絶対売れる気がするのに。Knorrは日本マーケットでリスクを冒さないのだろうか?今回のワールドカップで大ブレークした本田圭佑はこう言ってたぞ。

「リスクのない人生なんて、逆にリスクだ」.

中田みたいにいいこと言うな。世界で活躍するには、日本人のもつ共通の価値観を打ち破る必要があるのかもしれない。

でも、カルボナーララーメンが旨いのなら、逆の発想で、味噌スパゲッティ、とんこつスパゲッティなんてのも悪くないのではないか?食べ物ももっと冒険すればいいのにな。またしてもそんなくだらないことを考えてるうちに、決戦の時間がちかづいた。



鍋から直接食べてると、「ワイルドですね」とよく言われるが、2袋調理して食べるから、それを入れる器がないだけ。
 
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2010/10/14

嵐の前の静けさ

ポルトガル、良かったぞ。また一つ、思い出深い国ができた。スペイン行きのバスのなかでそんな感傷にふけり外を眺めていた。もし、スペインが優勝したなら、どうしようか?とにかく誰かに自慢したい。大人にあからさまに自慢するのは、みっともない。では、将来の孫にでもこう自慢しようか。「じいちゃんはな、スペインがワールドカップで初めて優勝した時に、スペインに居たんだぞ。」

ん、孫?
孫の前に子供だろ。子供の前に嫁だろ。嫁の前に彼女だろ。彼女の前に仕事だろ。ひとつひとつ突破していかなくてはならない壁を思い浮かべると、日本代表が優勝するのと同じくらい夢物語のようだと思えてしまう。はたして、未来に孫は現れるのだろうか?

そんなくだらないことを考えているうちに、13時半にバスは着いた。ここはスペイン第4の都市、アンダルシア州の州都、セビージャ。ワールドカップ決勝を観戦する舞台として、不足はない。バスターミナルから、事前に調べておいた安ホステルに向かう。しかし、ワールドカップの決勝当日だというのに、街に車も人通りもほとんどない。数分後、そのわけに気づかされる。暑い、とにかく暑い。気温が何度あるのかわからないが日差しがポルトガルの1.5倍増しだ。そうだ、この暑さだ、人が居ないのは、シエスタしてるためだろう。きたるべき決戦の刻に合わせて、エネルギーを充電してるのだ。

安ホステルにたどり着き、ドミトリーにチェックインすると、欧米人のバックパッカーどもが、ほとんど裸の状態でベットの上でへたりながら昼寝していた。そして、そのホステルの情報掲示板にはこう書かれていた。

「Have a siesta in the hottest hours」

暑い時間に出歩いてんじゃねえぞ、と。





42℃、静まる街。
 
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2010/10/10

朝の光

2010年7月10日、ポルトガル南西部に位置するラゴス。

7月28日にマドリードから日本に飛ぶ飛行機のチケットは、すでにインターネットで予約済みだった。ポルトガルの主要都市からマドリードまでは、バスで8~9時間ともうすぐそこという距離だ。日程にもアクセスにも余裕ある状況にあって、いつ、どこへ移動しても、しなくても、大した問題はなかった。

ラゴスはバカンスシーズンには外国から多くの観光客が集まるリゾート地。どこの宿も宿泊代は高かったが、運よく「貸し部屋」をしている民家を見つけ、そこに安く泊まることができた。その民家には、ゲスト用のシャワールームにバスタブがあった。これが素晴らしかった。これまで泊まり歩いた安宿にはバスタブなどなく、たとえあったとしても、お湯を溜めて入れるというような代物ではなかった。この旅でお湯に浸かったことは、インドのラージギルという町で入った温泉の一度きりだった。だから、肩までお湯に浸かれるということが、どんな美味しい料理を食べるよりも嬉しかった。また、この民家ではキッチンも利用できた。しかも、家主と共用のものではなく、ゲスト専用のキッチンだ。キッチンには、冷蔵庫だけではなく、電子レンジも完備されている。調理道具も全てが新品同様にきれいだ。ゲストは私一人しかいないので、キッチンを独占できた。

ゆっくり風呂に浸かり、温泉気分を味わった後、キッチンでお気に入りのカルボナーララーメンを作り、屋上のテラスに運ぶ。テラスに上がりラーメンと一緒にこれまたお気に入りのサグレスビールを胃に流し込む。ヨーロッパでは日暮れの時間が21時頃と遅いため、夕食をとりながらテラスから海と夕日を拝むことができる。そんな風景と食事と軽い酔いに満足しながら、街歩きと海水浴で疲れた体を癒す。

「極楽浄土」とはこのことだろうか。

そんな日々を3日程送り、ラゴスを離れるか否か迷っていた。ラゴスにはもう少しいたい気がした。このような好条件の所に泊まれることはなかなかないし、もう少しあの透きとおるような海で泳ぎたかった。しかし、翌7月11日はサッカーワールドカップ南アフリカ大会の決勝がある。そしてその対戦カードは、オランダとスペインときた。ワールドカップ決勝をその開催地で観戦することは、なかなかできることではない。しかしまた、ワールドカップ決勝をワールドカップを優勝するであろう国で観ることもそう簡単にはできない。

スペインが優勝するかどうかなどわからないし、ラゴスに後ろ髪を引かれる思いもする。だがやはり、スペインに賭けたい。なにせ、あの「情熱の国」なのだ。私は、ラゴスという土地に少し未練を残しながらも、翌日早朝、息を呑むような輝く朝日に見送られ、スペインに向かった。



民家の貸し部屋(一泊18ユーロ)
 


テラスでの夕食
 


テラスからの朝日
 
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2010/10/07

有為から無為へ

 ある朝、目を覚ました時、これはもうぐずぐずしていられない、と思ってしまったのだ。
 私はインドのデリーにいて、これから南下してゴアに行こうか、北上してカシミールに向かおうか迷っていた。
 ゴアにはヒッピーたちの楽園があると聞かされていた。それがどのような種類の楽園なのかは定かでなかったが、少なくとも、輝くばかりのゴアの海沿いの土地では、デリーやカルカッタの何分の一かの金で楽に暮らすことができるという話に嘘はないようだった。
 一方、カシミールはインドの高級避暑地でもあり、ゴアのような安上がりの生活は期待できないが、なによりも、雪を頂いたヒマラヤの高峰群を間近に望むことができるというだけで心ひかれるところのある土地だった。
<黄金のゴアにしようか、それとも白いカシミールにしようか・・・・・>
 私は迷いながら、しかしいつまでもその迷いを宙吊りにしたままデリーにとどまり、その日その日を無為に過ごしていた。

(「深夜特急」始まりの部分より)


 
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ご無沙汰しています。日本に戻り2ヶ月以上が経ちました。
このブログも一度区切りを打ちましたが、ポルトガルからスペインのマドリードに折り返すまでの旅の終盤を少し書いていこうと思います。